白内障と緑内障は名前が似ているので同じような病気だと思っている方が少なくないようです。しかし二つの疾患は多くの場合原因も治療も異なっています。いずれも年齢を重ねるごとに有病率が増えますが、疾患の違いで経過が大きく異なりますので、ご自身の病名を把握しておくことが大切です。
白内障は眼の中にある水晶体というレンズが濁る病気です。加齢によって生じることが多いですが、近視や全身疾患に合併して起こることもあります。症状として、初期症状ではかすみやまぶしさ、乱視を生じ、白内障の進行とともに視力が低下していきます。
進行を遅らせるため点眼治療を行う場合もあります。眼鏡をかけても視力が上がらない場合や生活に支障が出てくる場合は、ご希望があれば手術を行います。また、車の運転免許の更新に必要な視力(0.7以上)に満たない場合も手術の適応になります。手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを入れます。
緑内障は目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。受診の時期が遅れると残念ながら失明に至ることもあります(緑内障は、我が国における視覚障害(失明)の原因として第1位の疾患です)。また緑内障は「目の成人病」とも呼ばれ、40歳以上の中高年者に多く、約17人に1人の割合で罹病するともいわれています。
症状は、少しずつ見える範囲が狭くなっていきます。しかし、その進行は非常にゆっくりで、両方の目の症状が同時に進行することは稀なので、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。わが国の緑内障の推定患者数は約400万人といわれていますが、自覚症状がほとんどないため、治療を受けているのはそのうち約20%ともいわれています。緑内障は中高年の方に起こる代表的な病気のひとつです。症状がない場合でも、定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。
実際には見えないところは黒く見えるのではなく、反対側の眼で見た視覚情報で補っているといわれており、これが視野の変化に気づきにくい一因になっていると考えられます。
○ 原発開放隅角緑内障
房水(眼の中の水)の出口である線維柱帯が徐々に目詰まりし、眼圧が上昇します。ゆっくりと病気が進行していく慢性の病気です。
○ 正常眼圧緑内障
眼圧が正常範囲(10~21mmHg)にも関わらず緑内障になる人がいます。これを正常眼圧緑内障と呼び、開放隅角緑内障に分類されます。近年行われた全国的な調査の結果から、緑内障の約7割が正常眼圧緑内障であり、また欧米にくらべて日本人に多いとされています。
○ 原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭くなり、ふさがって房水の流れが妨げられ(線維柱帯がふさがれ)、眼圧が上昇します。慢性型と急性型があります。視神経の障害は、その人が耐えられる眼圧より高い場合に引き起こされます。目の中では房水といわれる液体が絶えず産生されており、房水はつくり出された分だけ、シュレム管という排水口を通じて眼球の外に排出されます。しかし、シュレム管の排出能力が落ちると、逃げ場を失った房水は目の中にとどまり続け、その結果、目の内部にかかる圧力(眼圧)が上昇します。必要以上に高い眼圧は、目の神経を圧迫して、視機能にダメージを与えてしまいます。
一方で、前述したように、最近では患者さんの多くが、もともと眼圧が高くないのにもかかわらず緑内障を発症しているということがわかってきました(正常眼圧緑内障)。そのため、元から視神経の眼圧への抵抗力が低く障害が起こる場合もあると考えられています。
一度障害を受けた視神経は元には戻らないため、緑内障を完治させることはできません。
したがって緑内障の治療は、視神経がダメージを受けてこれ以上視野が狭くならないように、眼圧を下げることが基本となります。
点眼薬による治療
眼圧を下げる効果のある目薬を点眼します。具体的には、房水の産生を抑える効果がある薬や、房水の流出を促す効果がある薬を点眼して眼圧を下降させます。もともと眼圧が高くない人でも、眼圧を下げることによって病気の進行を抑えることができます。点眼薬で眼圧がコントロールできない場合はレーザー治療や外科的手術が必要となります。
緑内障は早期発見がポイント!
緑内障は、一度発症したら一生付き合っていかなくてはならない病気です。根気よく治療を続けていくことが大切です。40歳を超えたら、年に1回は人間ドックや健康診断を受けましょう。一度失った視野は元には戻らないため、自覚症状の出る前に発見することが重要です。気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
ドライアイは近年増加傾向で、「目の現代病」とも呼ばれる病気です。高齢化、エアコンの使用、パソコンやスマートフォンの使用、コンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイ患者さんも増えており、その数は2,200万人ともいわれています。ドライアイは目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れることによって涙が目に均等に行きわたらなくなり、目の表面に傷が生じる病気です。ドライアイは涙の病気といえます。
「涙」は目の表面を覆い、目を守るバリアのようなはたらきをしています。
ドライアイの要因には様々なものがありますが、とくにパソコン、コンタクトレンズ、エアコンなどを使用することで涙が蒸発しやすく、不安定になり、目の表面の細胞を傷つけてしまいます。
また、「まばたき」は、涙の分泌を促す刺激となって涙を出したり、目の表面に涙を均等に行きわたらせるはたらきを担っています。
ドライアイ患者さんは、目が乾くなど典型的なドライアイ症状だけでなく、様々な症状に悩まされます。
ドライアイと一口に言っても、実は症状や原因は様々であり、単なる一時的な不快感・不調との区別がつけられないため、眼科医でなければ正しい診断・治療を行うことができません。
ドライアイは、生活習慣や他の病気により、涙の量や質が変わってしまうことで起こる病気です。そのため、市販の目薬で水分を補うだけでは十分ではない場合もあります。また、市販の目薬や水道水による洗眼は、かえって病状を悪化させてしまうこともあります。早期治療と定期的な通院がポイントです。
少しでも気になったら、当院にご相談ください。
結膜炎は眼科で最も多い炎症疾患で、結膜といわれる目の表面の白い場所が充血をし、目やにが増え、かゆみや痛みが生じます。
〇 アレルギー性結膜炎
スギ花粉など異物と認識した物質に過剰に反応することでかゆみが生じます。鼻炎とともに出現することが多いですが、春先のみではなく、夏や秋にもアレルギー物質が存在し、かゆみを引き起こします。また、家のハウスダストやダニもアレルギー性結膜炎の原因となります。原因となるかゆみ物質を採血で特定する場合もあります(必ずしも特定できるわけではありません)。かゆみは点眼などで治療します。
〇 ウイルス性結膜炎
いわゆる「はやり目」として、夏を中心に一年中発症します。充血が強く、目やにもたくさん出ます。主にアデノウイルスというウイルスによる結膜炎で、感染力は強いです。周りの人にうつす可能性もあるため、的確に診断することが必要です。当院では、アデノウイルスを検出するキットを用いたり、ウイルス性結膜炎に特徴的な検査所見を捉えることで診断します。
〇 細菌性結膜炎
細菌による結膜炎で子供からお年寄りまで幅広い年代で発症します。細菌の種類によって、炎症の状態も変わってきます。細菌に効果がある抗菌薬で治療します。
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。網膜とは、目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、視神経に伝達する組織で、カメラでいうとフィルムのはたらきをしている大切な場所です。
糖尿病は40年間で約3万人から700万人程度にまで増加しており、糖尿病予備軍を含めると2000万人に及ぶともいわれ、日本人の6人に1人の割合になります。糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経症と並んで、糖尿病の三大合併症といわれます。定期的な検診と早期の治療を行えば病気の進行を抑えることができますが、実際には日本の中途失明原因の第2位の病気です。糖尿病網膜症の症状は、病気の進行とともに悪化します。
初期の段階では、まだ自覚症状がみられません。しかし、目の中の血管の状態をみると、小さな出血や血管の変化など、少しずつ異常があらわれています。
中期になると、視界がかすむなどの症状が感じられます。このとき目の中で、血管がつまるなどの障害が起きています。
末期になると、視力低下や飛蚊症が起こり、さらには失明に至ることもあります。目の中で大きな出血が起こる、あるいは網膜剥離や、緑内障など、他の病気を併発している場合があります。
糖尿病にかかると、血液中の糖分を細胞がうまく吸収できなくなります。血液中の糖分が多い状態が続くと、やがて糖が血管にダメージを与えるようになります。網膜にある血管は細いので特に障害を受けやすく、血管がつまったり、出血したりするようになります。
もともとある血管が傷んで機能しなくなってくると栄養分などを届けられなくなるため、新しい血管(新生血管)が作られます。この血管はとてももろく、出血や成分の漏れをたびたび起こします。この状態が、視界がかすむ、視力の低下などの症状の原因になります。
糖尿病網膜症は、一度生じると完全に治すことのできない病気です。治療は症状の悪化を防ぐために行われます。
糖尿病網膜症は、自覚症状が出てからでは治療の範囲が限られてしまいます。 糖尿病の診断を受けた人は、自覚症状がなくても眼科を受診して目の健康状態を定期的に調べる必要があります。当院でも各種画像診断で病状を解析しご説明させていただいております。どうぞお気軽にご相談ください。
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